自然言語処理ライブラリGiNZAをインストールして簡単に動かすまでの手順

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はじめに
2019年4月に株式会社リクルートのAI研究機関であるMegagon Labsから、Python向けの日本語自然言語処理オープンソースライブラリ「GiNZA」(ギンザ)が公開されました(プレスリリースのリンクは以下)。GiNZAには国立国語研究所との共同研究成果の学習済モデルが組み込まれているそうです。この記事では、GiNZAをインストールして簡単に使ってみるまでの手順をまとめます。
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できるようになること
GiNZAをインストールし、簡単な使い方例をまとめます。GiNZAは自然言語処理ライブラリであるspaCyを使っており、spaCyと同じことができるようになっています。ここでは、以下のような処理を行う簡単なコードをまとめています。
- 品詞のタグ付けを行う
- 文単位でリストに格納する
- 文章、トークンの類似度を調べる
- 固有表現を抽出する
参考文献
この記事を書くにあたって、以下の文献、ページを参考にさせて頂きました。情報量が多く整理されておりとても勉強になりました。
言語横断的な係り受け構造を設計する試みとして、Universal Dependencies (UD) [1, 5]と、そこで使われる単語の品詞体系のUniversal PoS tags [7]が注目を浴びている。著者らは、UDの日本語版を設計する活動として、品詞体系、ラベル付き依存構造の定義の策定、そのgithub上での文書化と、参照用のコーパスの作成に着手した。本稿では、その最初の報告として、定義の原案とこれまでの主な論点、また既存のコーパスをUDの形式に変換する試みの状況について述べる。
GiNZAの実際の使い方例として以下がとても参考になりました。
GiNZAは内部でspaCyを使用しているので,tokenのインスタンス変数についてはspaCy公式ドキュメントを読めば大体わかります。ただし,pos_detailなどはGiNZAで独自に追加している変数なので,現状GitHubのソースコードを読み解くしかなさそうです。
前提と環境
以下の通りです。
- OS : Ubuntu18.04
- Python3.7以上とAnaconda、もしくはpipはインストール済とする
- この記事では、Anaconda環境を使用する
機械学習やデータ解析に触れる機会があり、今更ながら今後も必要になりそうなためまずはPythonを実行できる環境を構築しようと思いAnacondaをUbuntuにインストールしました。Anacondaをインストールすることで、PythonとJupyter Notebookの環境を構築できます。ここではその手順をメモします。
GiNZAをインストールする
インストールは以下のコマンド1つで完了です。v1.0.2
は2019年5月29日時点で最新のバージョンです。最新版はこちらの公式ページで確認できます。
なお、私のパソコンではAnaconda環境を構築済なため、Anacondaの仮想環境を有効化した上で上記コマンドを実行しました。本来ならばAnaconda環境でのパッケージインストールにはconda
コマンドを使う必要があり、pip
を混ぜて使うと後々パッケージの干渉など問題が起きる可能性があります。よって、Anaconda環境でpip
を使う場合は、別途新しくAnacondaの仮想環境を構築し、壊れて良い前提で使ったほうがいいかもしれません。私は今回触って見る程度の目的だったため、GiNZA用にAnacondaの仮想環境を構築しました。
GiNZAのインストールは以上で完了です。
簡単な使い方例
GiNZAはSpaCyがベースとなっているため、spaCyのドキュメントを見てみると基本的なことは大体できると思います。ここでは、簡単な例と実行結果をそれぞれいくつかまとめます。 なお、以降の使い方については、自然言語処理に関する知識がない私が書いています。したがって、理論的に正しいのか誤っているのか、そもそも意味があるのかなど、実行結果については各自で判断頂ければと思います。ここではあくまでどのようなコードでどのような結果が得られたかをそのまま記載します。 spaCyの公式ドキュメントは以下になります。
spaCy is a free open-source library for Natural Language Processing in Python. It features NER, POS tagging, dependency parsing, word vectors and more.
品詞のタグ付けを行う
いわゆる形態素解析になると思いますが、各単語の品詞をタグ付けします。これはGiNZAの公式ドキュメントにあるサンプルがそのまま品詞のタグ付けを行っています。
上記をここではsample.py
というファイル名で保存し、保存したディレクトリパスで端末から実行します。
sample.py
の実行結果は以下です。
上記では読み込んだテキストの各トークン(字句)に関する情報を出力しています。各トークンが持つ情報、すなわち取得できる情報はspaCyの公式ドキュメントに全て記載されています。
An individual token — i.e. a word, punctuation symbol, whitespace, etc.
上記のサンプルプログラムでは、token.i
、token.orth_
というようにトークンのプロパティを指定して出力しています。サンプルプログラムで出力しているプロパティは以下です。
プロパティ名 | 型 | 内容 |
---|---|---|
i |
int | ドキュメント内でのインデックス。トークン番号 |
orth_ |
unicode | 表層形 |
lemma_ |
unicode | 基本形 |
pos_ |
unicode | 品詞 |
dep_ |
unicode | 依存関係。rootラベルが付いたトークンと各トークンの依存関係 |
head.i |
int | head が依存関係の親のトークンであり、そのhead のインデックスi を返す。 |
pos_
)や依存関係(上記のdep_
)の英語名、またそもそもの定義などは冒頭にも参考文献として記載しましたが、こちら日本語Universal Dependenciesの試案 | 金山博、言語処理学会に全て記載されています。
また、spaCy公式ドキュメントの該当部分は以下です。
spaCy is a free open-source library for Natural Language Processing in Python. It features NER, POS tagging, dependency parsing, word vectors and more.
解析対象をファイルから読み込む
実際に解析する場合には、ある程度大きなテキストをファイルから読み込みたい場合が多いと思います。例としてtest.txt
というテキストファイルから読みみたい場合は以下のようにします。
なお、上記ではtest.txt
に含まれる内容を全て読み込んでいますが、状況に応じて1行づつ読み込むreadline()
を使用するなど使い分けが必要かもしれません。
以降の説明で、以下のように夏目漱石の「吾輩は猫である」の冒頭部分が保存されたtest.txt
を使ってみます。
文単位でリストに格納する
読み込んだファイル内のテキストを文単位で分けて各文をリストに保存します。ここでは、夏目漱石の「吾輩は猫である」の冒頭部分が保存されているtest.txt
を読み込んでいます。
実行結果は以下です。
文章、トークンの類似度を調べる
以下のように、ある2つの文章の類似度をスコア化して表示できます。
実行結果は以下です。0 ~ 1 の値で算出されます。
文章に出てくる各トークンの類似度をそれぞれ調べたい場合は以下です。
実行結果は以下です。
固有表現を抽出する
以下は意味のない文章ですが、以下のようにents
で文章の固有表現を取得できます。doc.sents
で取得できる各文章に対してもents
は使用できます。
実行結果は以下です。以下のように日付がDATE
、地名がLOC
(location)とラベルが付けられていることを確認できます。
spaCyの該当部分は以下です。
spaCy is a free open-source library for Natural Language Processing in Python. It features NER, POS tagging, dependency parsing, word vectors and more.
まとめ
まだGiNZAも公開されたばかりであり公式ドキュメントがなく情報も少ないため色々と間違っている、もしくは意味のない部分もあるかもしれません。もしお気づきの点やご指摘あればご連絡頂けますと幸いです。今後情報が増えてきたらより応用例などもまとめれればと思います。
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